沖縄の中学生を暴行した米兵が釈放された。自分の国(米国)でやったら、間違いなく刑務所行きになることをしたのに、と思うと歯がゆい。
 
 Statutory Rapeという言葉がある。日本では法的強姦、などと訳されているようだ。日本語/英語のWikipediaを参考に簡単にまとめると、「age of consent(AOC=性的同意年齢)に達していない未成年とセックスをする」ことをいい、性犯罪にあたる。age of consentは、「思春期を過ぎて身体が成長し、自分の性行為について判断する能力があると法的に認められた年齢」をいう。思春期前の子どもに対する性的行為はchild molestation(性的虐待)であり、より重い罪となる。
 男女関わらずこの年齢以下の者とセックスをした成人は、Statutory rapeの罪に問われる。たとえ相手が同意の上でのことだったとしても、「相手には正しい判断能力がない」わけだから、それを利用したとして罪になる。相手が十代とは知らなかった場合でも、必ずしも見逃してもらえない。
 このAOCの年齢が何歳かというと、米国の場合は州により異なるが16〜18歳だ。この法律は、性的行為によって起こる影響(心理的ダメージ、妊娠、性病など)をまだ理解していない未成年を、守るためにつくられた。裁判時に暴行があったことを立証するため、若い被害者が大変なストレスにさらされるのを、避ける意味もあるようだ。
 こうした未成年と性的行為をもつのは刑事犯罪であり、Statutory rapeのほか、child sexual abuse、carnal knowledge、corruption of minorなどの法律用語で呼ばれる。
 日本の性的同意年齢は13歳だ。各都道府県が定める淫行条令は、「18歳以下の男女との淫行」を規制するものとのことだ。これを「恋愛規制条例」と呼んで、反対する人も少なくないようだ。
 
 今回の沖縄の事件でも多くの暴行事件同様、「ついていった方も悪い」など、被害者の非をとがめる意見が出たようだ。「男と車に乗って2人きりになったらどうなるか、わかるだろうが」という意見も読んだ。
 そうだろうか。大人の男性にはわかるかもしれないが、14歳の少女の中に、わからない子がいるのは当然ではないか。自分の性欲だってよく意識したことがないかもしれない思春期の子に、男性の性欲がどれほど強くなり得るものか、わかれというのは難しい。一体誰が、そんなことを、ローティーン/ミドルティーンの子どもにわかりやすく教えているというのだ。「知らない人についていってはいけない」ことを漠然とは知っていても、なぜついていったらいけないのかをしっかりと理解していなければ、口八丁手八丁の相手には丸め込まれてしまう。「無知だ」「馬鹿だ」と言われるのももっとも。それが若くて経験不足ということなのだから。
 以前、十代の性について取材した時に、セックスをしたり、援助交際をする中高生の中には、「断りきれなくて、ついしてしまった」「嫌われそう/相手を怒らせそうで、恐くて断れなかった」という子が、少なくないことを知った。
 私自身が、だましたり、嘘をついたり、無理強いしてまで、セックスしたがる男性がいると知ったのは、大人になってしばらくしてからだ。さらに、そうとは知らずにそういう男性と関わったら、どれだけ女性が傷つくかを知ったのは、もっと後のことだ。
 
 米兵が強姦や交通事故を起こして結局は釈放される、ということは、日本のみならず、フィリピンなどでも起きてきたことだ。自分の国でならおそらくしないであろうことを、捕まるリスクの少ない外国にいるからしているのだとしたら、全く卑劣だ。
 昨年だったと思うが、フィリピンで22歳の女性を暴行した米兵に40年の懲役が課せられた。この事件について、女性団体はずいぶん激しく抗議したそうだ。
 またイラクについては、米兵による性的暴行が実際にはどれだけあるのかを懸念する声を聞く。イスラム教の国では、強姦された側がとがめられ、非難され、殺されることすらある。被害者が表沙汰にすることができないから、そこにつけこむ者がいるというのは、残念ながらあるだろう。
 沖縄の事件により、日米関係の政治的問題が議論されるのは当然だし、議論されてしかるべきと思う。私もアメリカの友人たちに、現状について知ってもらうよう話している。それと同時に日本国内のことについても、考えられるべきではと思った。