sasajun2007-06-01

 勧められて、『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』5月号のクリエイティブ資本主義の特集を読んだ。『The Rise of the Creative Class』の著者、リチャード・フロリダ氏のインタビューが面白かった。取材は大野和基さん。
 「クリエイティブ・クラスとは、新しいアイデアや技術、コンテンツの創造によって経済を成長させる機能を担う人々。グローバルなレベルで価値観を共有し、金銭的な報酬よりも内発的な報酬が動機づけに欠かせない」んだそうで、アメリカでは労働力人口の3割を占める。
 私としてはクリエイティブ・クラスの職業上の分類などよりも、クリエイティブクラスが集中しやすい地域の特徴とか、そういう話が興味深かった。
 クリエイティビティによって持続的な経済成長を目指すには、テクノロジー(技術)、タレント(才能)、トレランス(寛容性)の3つが必要。テクノロジーとタレントを生み出し、引き寄せ、とどめておけるかどうかは、寛容性・開放性・多様性の有無が影響する。
 で、「日本にオープンさが足りないのはもったいない」と提言。アメリカの方は移民政策を厳しくしたために、クリエイティブ・クラスや留学生が他の国に流れていっており、近い将来、国の経済に大きなダメージを与える、と危機感を訴えている。
 
 フロリダ氏は「ボヘミアンやゲイが多い地域には、クリエイティブ・クラスの人々が多く、経済が発展する」として、サンフランシスコを例にあげている。ヒッピーやロッカー、ボヘミアンなど、ちょっと違った自己表現をする人たちに対してとてもオープンな場所だったから、起業家に対してもオープンだった。サンフランシスコの近くにシリコンバレーができたのは、そういう背景があってこそ、と。
 確かにサンフランシスコに行く度にこのことは感じていたし、「ここはブラックシープの街で、生まれ育ったところになじまない変わり者が移り住んでくる所」と聞かされていた。ひと昔前は田舎の州に行くと、サンフランシスコと聞けばゲイありヒッピーありドラッグありの堕落した街、と眉をひそめる人もいたそうだ。
 もちろん東京を含め、大都会はいずれも異質なものを受け入れる懐は大きいけれど、サンフランシスコにいると特に、そういう人たちがのびの〜びとしているように感じる。ていうか自分がのびのびする。
 友人たちを見ても好きなことをやるのに忙しくて、人が何やってるかとか人からどう見られるかとか構ってない。自分にとって必要のないしがらみとか社会的プレッシャーは意識的に減らして、自分の好きなことや必要なことに集中するように生きている。そのための一歩がこの街に越してくることだった、という人にも少なからず出会った。
 とはいえ、自分の住んでる場所で十分のびのびやってる人や、そもそものびのびしたい欲求のない人は、現地に行ってもピンとこないかもしれない。
 
 フロリダ氏の次の本は、『住む場所の選択が人生で最も重要な決断となる理由』という仮タイトルだそうだ。人生には自分に向いている仕事に就くことも、理想のパートナーを見つけることも重要。住む場所として選ぶ場所が、それらにどれだけ影響を与えるか、どれだけ幸福にとって重要かを考察する内容とのこと。これからアメリカに半分以上住もうと思っている私には、なかなかそそられる内容だ。