sasajun2007-02-11

 ストックホルム・ファニチャーフェアのプレスツアーで、1週間ほどスウェーデンに来ている。写真は、ファブリックメーカーのショールーム。North Tileという作品で、フェルトでできたLEGOみたいな感じ。こちらに来る前、「スウェーデン人はヨーロッパの日本人と言われている」とか「みんなすごくナイスだから心配ない」とか「御飯がすごくヘルシーでおいしい」とか「みんな英語がうまい」とか聞いていたが・・。
 
 その通りだった。
 
 話すときに「スウェーデンは小さな国なので」と前置きしたり、人との対立を避けたり、控えめで穏やかなところが日本と似ている。一回一回トイレの電気を消すなど、節約感覚も共通しているようだ。
 デザインもしかり。日本の家屋にもなじむシンプルなデザインの陰には、この地域の合理的で質素な暮らしぶりがあることを、つくづくと感じる。
 何しろ貧しい国だったのだ。厳しい自然環境の中、農業もままならず、19世紀終わりごろには随分多くの人がアメリカに移住したらしい。
 日本でも人気のあるデザイン集団「Design House Stockholm」のスローガンは、「Don't make something unless it's both necessary and useful, but if it's both necessary and useful, don't hesitate to make it beautiful. (必要で役立つもの以外はつくらない。でも、必要で役立つものなのであれば、ためらわずに美しいものにする)」というものだが、北欧デザインの真髄を表していると思う。
 スウェーデンに着いてから、公共スペースのデザインの美しさに感心しているが、そこには「人に親切なデザインを、みんなに」という社会主義的・民主主義的リベラリズムが感じられる。
 
 ところで、何度か耳にしたのはコピーの問題だ。デザイナー家具が中国でコピー生産され安く売られてしまうことに、デザイナーたちは複雑な思いを抱いている。ファニチャーがファッション化すればするほど避けられない問題で、頭が痛いようだ。ファニチャーフェアでも作品のディテールの写真を撮られることには、多少神経質になっていた。プレスツアーには上海からジャーナリストがひとり参加していたが、中国から招かれたのははじめてとのこと。中国では著作権という概念が欠けているのだろうが、彼女はこういう問題について書くのだろうか。
 
 北欧からは、人間工学や環境に配慮したデザインが、これからも生まれていくだろう。デザインの背後のストーリーが、デザイナーと人々の間でもっとコミュニケーションされるとよいなと感じた。