『Intolerable Cruelty(ディボース・

ストックホルムからの帰り、新聞でこんな記事を読んだ:Divorce: Money changes everything。「離婚裁判の2つの判決を受けて、英国では結婚がハイリスクのギャンブルになった」という小見出しがついている。
 その2つの判例とは、
1. 16年間結婚していた会計士が、年収750,000ポンド(約1億7790万円)の1/3にあたる250,000ポンド(5,930万円)を、生涯毎年、離婚する妻に支払うよう命じられた。
2.  結婚期間が3年以下で子どもがいないにも関わらず、17.5millionポンド(約41.5億円)の財産のうち5millionポンド(約11.86億円)を離婚する妻に与えるよう命じられた。妻側の弁護士は「この結婚により、経済的に恵まれた将来を期待するのは正当」と主張した。
 記事はこう続く。こういうことが可能になると、「Platinum digger」(英語で金目当てに結婚相手をさがす人をGold diggerというが、そのさらに上を行くという意味)が出てくるのでは必至。でも今後は女性の金持ちも増えるので、女性も狙われる。それから別れてもお金がもらえるとなれば、熟年離婚も増えるのではないか。
 そんなわけで、この記事でインタビューされた弁護士の事務所では、結婚前にプリナップ(prenuptial agreement=結婚前の財産に関わる同意書)を交わすために相談に来る人が増えてきたが、「プリナップがあっても万全ではない」とリスクを説明すると、結婚をとどまることも多いそうだ。
 おまけに国際結婚の増えた昨今では、裁判の管轄によって有利・不利があるので、「銀行家と結婚しているフランス人の妻が相談に来たらすぐにイギリスで訴訟を起こすよう勧め、相談に来たのが夫の方だったらすぐにフランスで届けるよう勧める」んだとか。
 さらに仕事を持っている女性よりも、妻が専業主婦だった場合に支払う金額が増えるので、働いて子育てもしてる女性から不公平だとの意見も。昔はお金のない方が「別れたくても生活力がなくて別れられない」というのが多かったのが、最近はお金のある方が「今別れたらヤバイ。何とか別れずにすむ方法はないか」というケースが増えているという。
 最も高くついた離婚として有名なケースがポール・マッカートニーで、2番目の妻に払った金額は4年間の結婚期間に換算すると、1時間1,800ドルになるそうだ。

 イギリスではコハビテーション(同棲)が増えていて、2031年には2倍の400万カップルになると予想されている。コハビテーションの場合、たとえ子どもがいたとしても、別れた後には何の義務も派生しない。2004年のイングランドウェールズで届出のあった273,100の結婚のうち、109,400が再婚。離婚数は154,000だった。結婚を避ける人がますます増えることが、予想される。
 
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 日本では、結婚前から持っていたり相続していた財産は財産分与の対象にならないし、扶養的財産分与が認められるためには、自立の準備・高齢・病気・子どもの世話といった基準がある。私の知る限りでは、経済力と良心のある男性と別れて離婚後も手厚く面倒をみてもらえている女性もいるが、ほんの一部に過ぎない。
 
 ・・と書いていたら、離婚してからの母の苦労を思い出した。母の場合、縁も金もあっけなく切れたが、心がなかなか切れないのが一番つらかったんじゃないかなぁ。