前回書いたマイケル・カニンガムの講演の時に、文学作品の翻訳について質問が出た。その時の、柴田元幸さんの回答:
 
   翻訳はlosing battle(負け戦)です。
   でも、同じく負けるにもいろんな負け方があるでしょう。
   6-10で負けるよりは、6-7で負ける方がいい。
   原文が優れていればいるほど、
   翻訳者ができることの余地はなくなります。
   ただ、忠実に訳すことだけを考えればいい。
 
 いつものことながら、何てwittyな回答。オースターの『孤独の発明』を初めて読んで以来、柴田さんのファンになった。選ぶ作品や訳もそうだけど、エッセイが面白いのだ。あまりに純粋にファンなので、仕事でインタビューしたいという気持すら起きない、たぶん唯一の人物である。