日本の雑誌などで最近「結婚しない男」「結婚できない男」の特集を見かける。私の男友達の大半は、20代から「ずっと結婚している人」たちか、結婚はしてもいいけどしなくてもいいかな〜という「ずっと独身の人」たちだ。だけどアメリカに行くようになってから、男女とも離婚経験のある知り合いが急増した。アメリカでは何才になっても恋愛ができる、というのは、離婚した人たちがシングル市場にカムバックして、恋愛にチャレンジし続けるからだろう。
 
 そんなわけで、アメリカには「何度も結婚する男」が、日本の何倍もいる(女性もそうだが)。若いうちに最初の結婚をして、ラッキーが続けばそのままハッピーに結婚していられるのだが、20〜30代にかけて、やれ大学院だ、就職だ、転職だ、子育てだ、と変化を経るうちに、夫婦が違う方向に成長してしまうというのはよくあること。心が離れると体もよそを向くので、どっちかが浮気をするか、セックスレスになる。アメリカ人は日本人ほど浮気にもセックスレスにも寛容でないと思う。カップルセラピーに通ってみたり、いろいろ努力はしてみるが、最後には離婚するカップルが多い。離婚調停の費用や親権争いの苦痛は相当なものだ。
 そんなこんなでセパレーション(別居)を経て離婚するのだが、セパレートした途端に新しい恋人が現れたりする。孤独をかみしめる間もなく恋愛をして、また結婚する。そしてラッキーが続かない場合、数年後にまた離婚する。・・独身の私としては、こうして書いてるだけで疲れてくる話だ。
 ひとりめの奥さんに家を一軒、ふたりめの奥さんに別荘を一軒、と財産を持っていかれ、そのたびに自分はほぼ無一文になっても、へこたれずに一から這い上がる。で、こういう男性は往々にして子どもも好きなので、サポートする子どもの数も増えていく。さらに新しくつきあう女性にも子どもがいたりすると、身の回りの子どもの数は10人近くにもなる。何て言うか、家族がどんどん広がっていくのだ。毎月誰かの誕生日がある。どこかの州で親戚の誰かが結婚するなんて時には、みんなの飛行機代を捻出するのだってかなりの額だ。
 こういう友人に「何度も大変な目にあってるのに、どうしてまた結婚したいの?」と聞いたら、「僕は結婚してる状態がデフォルトなんだ。一夫一婦が好きなんだよ」。左の薬指にリングをしてないと、どうにも落ち着かないらしい。でも、苦労を苦労と思わない楽天的な性格が人をひきつけるのか、単純にほれっぽいのか、次々に恋愛の相手が現れる。どんなbaggageを抱えてようと、本人がそれをbaggageと感じてない限りは、それほど重くないってことか。
 
 こうした友人たちを見ると、彼らのお葬式のことを想像してしまう。たくさんの子どもや孫たちと、過去の妻たちや恋人たちが集まって、それはそれはにぎやかだろう。この世に残していくものは人それぞれだ。こういう生き方も、悪くないのかもしれない。