若い女性に向けて、セックスのメンタルな面について本を書くお話をいただき、何冊か本を読んで考えていた。
 なにぶんパーソナルなテーマなので、どう書いたものか逡巡していると、「君が若いころに知らなかったこと、知っておけばよかったと思うことを、お姉さんになったつもりで書けばいい」と、ジャーナリストの友人に励まされた。
 
 私としては、安心・安全あってこそのハッピーセックスなので、避妊やSTD(性感染症)などについても知識がもてる本にしたいと思った。でもセーフセックスを自ら実践するためには、ある程度、性に対して積極的・ポジティブな態度が求められる。
 30代以上の夫婦のセックスレスに関する本を読んでも、10〜20代初めの女の子の性行動を取材しても、根っこに共通しているのは、男性や性に対して非常に受身な態度をとっていることだ。たとえば、
  AV的行為を強要されてもイヤといえない
  避妊を男性まかせにする・避妊を言い出せない
  風俗に行ったパートナーから性病をうつされる
  自分の性欲やこうしてほしいということを全く表現できない
  自分が恋愛したいということを認められない
  絶対に遊ばれたくないと頑になっている
などなど・・。
 そういう受身の態度がどこから来ているのかたどっていくと、自己評価の低さだったり、いい子でなければならないという抑圧だったり、失敗への恐怖だったり、プライドだったり罪悪感だったりする。
 人とどう関わりコミュニケーションをとるか。自分の殻をいかに破って新しい満足を求めるか。そして、自分の心と体をいかに大事にするか。結局そこには、他のあらゆることと同じように、生き方に対する姿勢があらわれているように思う。
 そしてそれは、長く議論されてきたフェミニズムにつながっていく。
 編集者の方と話し合った結果、「セックスの精神面を、具体的な行為に関する話や文体を通じて表現することはできるけれど、精神面だけについて書こうと思ったら生き方について書くことになってしまう」と説明して、申し訳ないのだけれどこのお仕事を降りさせていただいた。自分の性愛哲学なんて、少なくともまだないしなぁ。
 
 私個人としては、カジュアルセックスをするにせよ、結婚までNGにせよ、要するに自分が自分の性生活を意識的にコントロールすることが大事と考えている。でも今のその意識は、試行錯誤の産物。やっぱりいつか、セックスについて書くべきかもしれない。