American Sociological Reviewにの調査によると、アメリカ人の4人にひとりが「社会的に孤立していて、個人的な悩みを相談する人がいない」と答えている。また、「相談できる相手は配偶者のみ」と答えた人が約10%いたそうだ。日本で同様の調査があるとしたら、どんな数字になるだろう。
 日本語堪能なアメリカ人の友人が日本でヒッチハイクをして旅した時、多くの人が車に乗せてくれて、とても個人的な話ー浮気したこととか、家庭の事情とかーを打ち明けるので驚いたと言っていた。もしかしたら彼はその人たちにとって、ふらりと現れて、ふだんの生活の秩序をちょっと乱し、気持を言語化する触媒となり、またふらりと去っていくトリックスター的な役割を果たしたのかもしれない。
 アメリカは移民が多い国なので、外国人といっても日本とは立場が異なるが、それでも短期的に滞在する「よそ者」としてここにいると、たまに似たような体験をすることがある。自分はジャーナリストだと言うと警戒されるかと思いきや、ますます張り切って話すのだ。そんな時、この人は質問を待っていたのだな、自分の声を聞いてほしいのだな、と感じる。日本人なら人目を気にするような極めてパーソナルな話でも、テレビや雑誌に出たがる人が多い。ライターの友人は「この仕事をしていて面白いのは、会ったばかりの人から、いきなりパーソナルで深い話が聞けること」と言っていた。
 寂しさを擦り傷のようにさらしてシンパシーを求める人もいれば、手品のように静かに懐から取り出してみせる人もいる。こちら来て12日間、いくつかのストーリーを聞いた。