サンフランシスコは物価が高い。アメリカというと、みんなが広いアパートや家に住んでいると思っている日本人もいるようだが、サンフランシスコ市内に限ってはそうではない。1bedroomを借りようとすると、1500ドルくらい。2bedroomであれば、1800〜2300ドルくらいが相場だと思う。studio(ワンルーム)でも1000ドル以下のところはなかなかない。円高になり、1ドル105円で計算したとしても、10万円以下の家賃では、ひとり暮らしはできないということだ。

sasajun2008-04-18

 
 もちろん物価だけでなく、平均年収も高い。minimum wageは時給9ドルだ。私は日本のクライアントさんから日本円で支払っていただいているお仕事が多い。昨年引っ越してきた時は為替が1ドル125円くらいだったので、ジュースひとつ買っても「高いなぁ」とめげたものだ。
 
 で、サンフランシスコと周辺のベイエリアで高騰が著しいのがガソリンだ。アメリカのガソリン価格を、gasbuddyでチェックしてみると、カリフォルニアの価格がどれだけ高いかわかる。今朝の新聞に、「1ガロン4ドルの都市になろうとしている」という記事が出ていた。
 
 こないだBARTに乗ったらけっこうこんでいて、「何かイベントでもあったのかな?」と思った。そうではなくて、電車/バス通勤に切り替える人が増えているとのこと。今年1月に比べると、平日は平均23,000枚もチケットの売り上げが増えたそうだ。ガソリンに加え、ゴールデンゲートブリッジ、ベイブリッジなど、マリンやバークレーなどの隣町との行き来に使う橋の通行料も上がり続けている。家族2人が別々に車通勤をしたら、月のガソリン代は500ドルにもなりうる。会社から通勤交通費は出ないので、そのまま家計にひびく。
 
 ガソリン代の高騰で、市民のライフスタイルにこのような変化が出ている。
*公共交通機関の利用が増えた。
*家族や同僚とカープールするようになった。
*燃費のいい車種や、ハイブリッドカーに買い替えた/買い替えようと思っている(プリウスのタクシーも見られる)。
*自宅勤務を増やした。
*用事をまとめて済ますようになった。
*ガソリン代はカットできないので、食事やレジャーなど、他のことで節約している。
 
 ため息をつきながらも、「多少の不便はあるが、車の運転を減らすことが環境にはプラスになっていると思うと、悪い気はしない」という市民が意外と多い。
 市長には、ここで一気に予算を投じて、公共交通機関の拡充をはかってほしいものである。市民に不便を強いるより、BARTやMUNIを、もっと便利に使えるよう改善する余地は十二分にある。なんつっても、あのBARTの券売機はdumbでいただけない。チケットの買い方がわからなくてまごまごしている人が多く、私もいつも助けてあげている。MUNIのドライバーの中に、お客さんに意地悪な態度の人がいるのもむかつくし、スケジュールにルーズすぎる。
 サンフランシスコに住んでいてすごく恋しいのは、安全で効率のいい東京の電車だ。YouTubeで長年お世話になった中央線の映像を偶然見た時は、思わずじーんときた。サンフランシスコの公共交通機関の整備が進まない理由のひとつが、「地震があるから」ということらしいが、Muniの職員を数十人、営団地下鉄に研修に送り込んでほしい。日本は交通機関構築のコンサルティングによって、世界に貢献できるはずだと真剣に思う。
 
 私はいま車の運転を練習中で、Zipcarというカーシェアリングサービスをよく利用している。これがなかなかのサービスで、この会社の株が売られていたら買いたいと思ったくらい気にいってしまった。(残念ながらプライベートカンパニーだった。)近所の駐車場から1、2時間単位で、好きな車が借りられる。プリウスミニクーパー、ジェッタなど、人気車種がそろっているので、毎回、どれに乗ってみようかなーと楽しい。予約はネットでするのだが、インターフェイスが優れていて快適だ。
  
 SFのガソリン高騰について、他の都市の保守派には「公共サービスの充実を求めるリベラルが多いから、税金と物価が上がるんだよ。ざまみろ」という人もいる。だが、NYを除いては超車社会の米国に「車持たない方が、もしかもしてかっこよくない?」というのが主義/ライフスタイルとして取り入れられるとしたら、それはやはりサンフランシスコから始まるような気がする。