前回のタイトル「Your first kiss」といえば・・。前にディスカバリーチャンネルでやっていたのだが、恋人や夫婦を対象に調査を行なったところ、出会ったときの記憶は曖昧な人が多く、例えば夫が「彼女は黒のパンツをはいていた」といえば妻は「私は紫のスカートをはいていた」という具合だった。だが初めてのキスについては、どこでどのようにして起きたのか、ほとんどのカップルがきわめて正確に覚えていたという。
 日々すれ違い、出会う人の中で、一体何人とキスをする可能性があるか。そう考えると、first kissはとてもロマンティックで強烈な体験といえる。
 
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 ところでここからは、全然ロマンティックじゃないキスの話。キスの上手な人のことを、英語でgood kisserという。家族や友人間でのチュッという軽いのを含めれば、アメリカ人は日本人よりもキスをする回数が多いと思うけど、そのせいかキスの得手不得手はけっこう重要視されている。そういえばキスのしかたを指導する先生なんてのもいて、前にテレビに出ていた。
 
 友人のサブリナが、「あ〜ぁ、サンフランシスコにはなかなかいい男がいないなぁ。いいと思うとゲイなのよねぇ〜」と、いつものようにぼやく。このぼやきって、SFでもNYでも東京でも一緒なんすけど。
 「こないだデートした男、ほんっとうに残念だった! プロのバンドのドラマーで、すごくルックスもよくて、逞しくて、センスも抜群。ものすごく気が合って、食事の後’うち来る?’って聞かれた時は,もう’行く行く〜’って感じでついてったの。すごくいい感じで、’完璧な土曜の夜!’って思った」
 
 余談だが、SF市内では「プロのミュージシャンとつきあってる(つきあってた)」という話をけっこう聞く。私の知ってるだけで5人。伝説のライブハウスや『ローリングストーン』誌発祥の地だけはある(?)。 そういう女性たちに「シリコンバレーで稼いでる人とかどうよ?」と言うと、「ギーク?つまんなーい」と頭ごなし。かっこいいギークだっているのになぁ。偏見だよ〜。まぁこのへんの食わず嫌いも、NYや東京の女性と通ずるものはありますが。
 
 「で、その彼とどうなったの?」「うん、それでね、彼の部屋のカウチでメイクアウトしはじめてね、そしたらさぁ・・史上最悪のkisserだったのよ! ’きゃー’って逃げて帰ってきた」
 ’きゃー’って逃げ帰るって・・。思い切って「どうヒドかったの?」と聞いてみたら、「私の口に口を入れて、舌を思いきり吸ったの。顎が外れるかと思った。あ〜気持ワル!」
 
 なんか格闘技的っていうか、すごいキスもあるもんだ。女性どうしで話し合ったところでは、ロマンティックなキスというのは「前戯的なやさしいキスや仕草やふれ方」を伴うもの・・のよう。やっぱりキスは上手にこしたことはないみたい。