「21世紀の科学技術のフロントランナーとしてのあるべき姿」と題するシンポジウムに行った。ノーベル賞などを受賞した日本の科学者4人を迎えて、主にこれからの科学者育成についてお話をうかがうというもの。「博士課程はフリーター養成所と教授に言われた」「学業の成績は科学者の実力を意味するのか」といった高校生や大学生の質問には将来への不安がにじみ出ていたが、先生方の回答はすっぱりと「自分で考えて自分の信じた道を進むべし」。以下、印象に残った各氏の発言。
野依良治
「文化とは心のよりどころ。文明とは近代社会の状態を示すもので、進化を宿命づけられている。現在は文明が文化を踏みにじっている。文化を尊ぶ
文明をつくらなければならない」
「欧米諸国や日本は先進国というより、もはや過進国。国際協調のための技術が望まれる。世代間の競争はいけない。私たちの世代は十分恵まれている。未来の世代のために努力すべき」
小柴昌俊
「これをやりたい、自分を幸せにできることを積極的に見つけてほしい。クリエイティブな仕事は、学校で習う受け身の勉強ではできない。科学者の仕事は能動的な能力と受動的な能力のかけ合わせ。やりたいことなら研究に疲れも感じないし、困難も乗り越えられる」
末松安春晴氏
「生物学が進み、人間が自分を変えられる状態まで来ている。また、地球も監視すべき状態。科学と技術だけでは手に余る問題を抱え込んだ今、心の問題、芸術の感性など無視できない。科学者は人間性をしっかり磨くこと」
白川英樹
「学部で一般教養をしっかり勉強する。その中で、目的意識が生まれる。それから大学院で専門をやるのが望ましい。日本で好きな研究ができないとか、将来のことを憂えるばかりではなく、海外に出ていって研究するのもよい」