今夜はサンノゼに住むカップルの家で、サプライズ・バースデーパーティ。集合時間の6時前に行くと、すでに30人ほどの人がワイングラス片手におしゃべりしている。うわー、女性たちがちゃんとメイクしてるよ。デザインもののセーター着てるよ。いかにもサンノゼのリッチなカップルが揃ってるよ。どうりで出かける時に「スニーカーじゃなくてブーツ履いたほうがいいかも」と言われたわけだ。
パーティの仕掛人はヘザー。スレンダーでストレートヘアで洗練された感じの、きれいな女性である。夫のエディの誕生日は12月23日。クリスマス休暇中なので友人には祝ってもらえないのが常だが、今年は40回目なので企画した特別なパーティがこれ。仲間がエディをゴルフに連れ出し、6時半きっかりに一緒に帰宅することになっている。クラッカーだの笛だのが配られると、「Attention!」とヘザーが一言。「あと10分でエディが帰るから、みんなこっち来て並んで!」。玄関の扉を開けるとまず8畳くらいのインドアガーデンがあり(背の高い竹なんか植わってて、ちょっと料亭風)、その奥にリビングに入る扉があるのだが、この庭にみんな集合する。ビデオ部隊もスタンバる。壁にはすりガラスが使われているので外から見えないよう電気を消し、「みんな動いちゃダメ!シーッ」。ヘザーは必死である。何としても成功させねばならないのだ。隣家のだんなさんからケータイに電話が入る。ガレージで作業してるフリをしながら帰りを見張っているのだ。奥さんと子供たちは、こっちでみんなと一緒に息を潜めている。
さて、外で車の音がして、男の声がして、鍵がカチャカチャいって、扉が・・・「はっぴーばーすでーーー!!」パンパーン、ピーピー、ヒューヒュー。目をぱちくりさせるエディに、ヘザーが抱きついた。
サプライズパーティはたいがいが企画段階でバレてしまい、本人はわざとらしくだまされてみせるのがお決まりみたいだが、誕生日の3週間前ということもあり、エディは全然!気づいてなかった。おまけにLAから飛行機で駆けつけた友人なんかもいて、心からうれしそうだった。1ヶ月くらい前からプランしたそうだけど、ヘザーは一体何人と何通のメールをやりとりしたのかしらん。愛する夫のためにここまで頑張っちゃう彼女に脱帽。
お食事はケータリングのスタッフがキッチンで作ってくれたものを、20畳くらいの裏庭でいただく(畳の数でしか空間サイズがピンとこない。なんとかしたい)。お品のよいグラスにシルバーウェア、白いテーブルクロスに白いナプキン。レストランのパティオでよく見る背の高いストーブが数台。これもケータリングとのこと。前の庭も、裏の庭も、くーっ、東京ならレストランでしかありえないアンビエンス。
このカップルは、二人ともアドビにお務めの働き者。私の推定では年収は二人合わせて50万ドルほどか。家の趣味のよさに目を見張る私に、アレンは言った。「この二人は稼いでるわりにはつつましやか。吐き気がするくらい豪華な家に住んでる人が、この辺には山ほどいるんだよ」。そりゃいるんでしょうね。世界の知性とマネーが集まる場所なんだからして。東京ではまずありえない家に、ありえない誕生会。ここはアメリカ、シリコンバレーである。