スゴイ映画だった。「ダーウィンの悪夢」は、既に多くの映画祭で受賞をしており、欧米では劇場公開もされている。読み聞きはしていたグローバライゼーションの問題だが、映像として目の前にすると口もきけないほどの衝撃だった。ところはタンザニアビクトリア湖。60年代にここに放たれたナイル・パーチという魚が、自らの稚魚を食べてしまうほどのパワーで他の魚を食べ尽くし、生態系を破壊してしまう。
その間、ナイル・パーチ輸出産業は大きく成長し、今ではタンザニア輸出物の1、2位となり、ユーロと日本で毎日200万人がこの魚を食べている計算だ。グロテスクな魚なのだが、工場で加工され、きれいなフィレになって箱詰めされ飛行機に載せられる。悲惨なのは、現地の人が食べる魚がなくなってしまったこと。魚肉がきれいにとられて頭と骨だけになった魚が、トラックに載せられてゴミために廃棄される。・・と思ったら、現地の人たちはそれを拾って干して、スープにして食べているのだ。ウジがわいて、どう見たって腐っているその魚を。
空っぽの飛行機がタンザニアに到着しては、何百箱ものナイル・パーチのフィレ肉を積んで欧州に帰っていく。先進国がタンザニアに持ってくるものはない、とっていくだけの構図。しかしたまに積んでくる箱があって、そこにはどうやら密輸される武器が入っている。こうした武器は、リベリアソマリアに流れていくらしい。
監督のフーベルト・ザウパーは、パートナーとともにジャーナリストの身分を隠して、いわばフタをされた臭いものである地を激写した。そのいきさつは、ウェブサイトで読める。
Darwin's Nightmare」
http://www.darwinsnightmare.com/darwin/html/startset.htm
日本ではナイル・パーチがどのように売られているのか調べたところ、スズキと称してスーパーで切り身が売られていることがわかった。おそらく冷凍食品や給食弁当、ファストフードなど加工食品にも使われていることと思われるが、その詳細は定かでない。この映画を見て以来特に、スーパーや100円ショップで買う中国産商品かげに、どんなストーリーがあるのか、疑問を持たずにいられない。
一体私たちはどうやってこんな状況を作ってしまったのか? We are part of a big system.という言葉に、どうしようもなくグロテスクな現実の中にいる人類を感じた。