山形国際ドキュメンタリー映画祭で最初に観た作品は、オーストラリアの監督の「In the Shadow of the Palms」(http://www.intheshadowofthepalms.com/)。アメリカによるイラク侵攻前とそのさなかの、バグダッドの普通の人々の日常がおさめられている。「アメリカは石油が欲しいだけ。私たちは当たり前に平穏に暮らしたいだけ。こんなことならサダムがいたほうがまし。ほっといてほしい」とイラク市民。
誰よりもアメリカ人に見てほしい映画だが、ウェイン・コールス=ジャネス監督によると、今のところアメリカの映画祭では選出されていないとのこと。トラブルの火種はいらない、ということだろう。頼みはもっとも進取的といわれるサンフランシスコ・ドキュメンタリー映画祭。来年春、ぜひ上映されることを祈る。911以来オーストラリアも右傾化だそうで、「テロリズムと戦え」的なプロパガンダもみられ、この映画は国内上映されていないとのこと。そもそも撮影時だって9回拘置され、資金を出してくれる人もなく借金して撮った映画なのだが、帰国してみたら国内での嫌がらせもけっこうなものだという。「どこか映画を作りやすい国に移住したい」という監督は、けっこう本気に見えた。
この映画、爆撃と占領を身をもって経験した日本人には、共感できる場面が多いと思う。空襲警報を聞いても逃げるでもない人もいれば、家や家族を失う人もいる。がれきを掘って近所の人を助け出し、幼い子どもが死んでいく。戦争ほどの無駄が世の中にあるのか、そう思わざるをえない。