アメリカのティーネージャーは早熟そうなイメージがあって、最初は話すのがちょっと恐かった。実際に時間を過ごしてみたらそれは完全な偏見で、むしろ日本の子よりも無邪気な感じがすることも多々ある。本や映画の感想を話し合ったりもするのだけど、盛り上がるのは同じ音楽が好きだと知った時だ。

sasajun2007-11-22

 で、ティーネージャーにすごく人気のあるのがLinkin Park。デビューした時から私も大好きなバンドだ。
 
 96年に結成。ウェブサイトを起ち上げてMP3ファイルをアップロードした。この時まだ20歳前後。他のウェブサイトやチャットルームで告知をしてサイトに人を呼び、曲を聴いてもらってフィードバックを求めた。聴いた人たちから「こっちに来てライブやってよ」と言われるようになり、他の州にも行くようになった。評判が広がり、「もっと曲が聴きたい」「宣伝に使うものを用意して」とリクエストが増えた。
 いつのまにか世界中に’現地の応援チーム’ができていて、自主的にプロモーション活動をしていた。現在のファブクラブ、LP Undergroundのもととなった彼らは、高校生大学生を中心にかなりの数にのぼっていて、とても熱心に活動していたそうだ。ニューヨークには1,000人以上いたらしい。また、スウェーデンのような国のファンから「宣伝のために配りたいから、Tシャツやステッカーを用意して」と連絡が来たりしていたという。
 リンキンはライブを行なって得たお金でテープを作り、ファンの子たちに送った。その子たちが他のコンサートに行き、会場から出てくる人たちにテープを配った。こうして多数のファンを獲得していたにも関わらず、メジャーデビューまでは苦労したそうだ。ほとんどの大手レコード会社は見向きもせず、音楽業界での評判も今いち。随分失礼な断り方をされたりもしたという。「業界人はわかってないし、わかんない奴に用はないと思ってた。自分だったら絶対に買うレコードを作っている自信があった」(マイク)。
 
 最終的にはワーナーブラザースと契約し、デビューアルバム『Hybrid Theory』が1,400万枚を売り上げ、2001年最も売れたCDになった。ネットのファイルシェアリングを含めたら、2000万枚になると推定されるという。
 2003年に世界ツアーを行なった時、リンキンはLP Undergroundのために何都市かの小さな会場で無料コンサートを開き、実際にメンバーに会ってお礼を言ったそうだ。
 
 リンキンは超メジャーになったが、初期の彼らと同じようにウェブでCDや曲を宣伝販売し、ツアーブログを書き、ライブ会場でファンとふれあいながら、音楽活動を続けているミュージシャンはたくさんいるだろう。大レーベルと契約してメガリッチにならなくとも、「好きなことをして食べていける」人が増えるといいなと思う。
 
 ・・で、リンキンの魅力はというと、「ロック、ラップなど色んな要素のまじった構成」「ハードだけど汚い言葉使いがない」「一緒に歌えるキャッチーなメロディ」など、いろいろあるのだけど、私的には鼻歌したくなるメロディーと一緒に頭に残る、ちょっと重たい詩がたまらない。
 どういう創作プロセスかというと、大抵は曲を作ってから、中心メンバーのマイク・シノダとチェスター・ベニングスが詩を一緒に書くそうだ。マイクはインタビューでこう言っている。
 「僕らは違う経験をしているから、詩を書く時はお互いに違うことを考えている。だけど先に深く進む前に話し合って、内容が矛盾しないようにしている。僕らの歌の内容は、僕だけの考えでもなく、チェスターだけの考えでもなくて、その真ん中へん。それが曲に普遍性を与えているんだと思う」
 「チェスターはよくこんな風に例える。’交通事故に遭って入院したとしたら、孤立して寂しくなるだろうし、きっと色んなことを感じるだろう。それを詩にしてみよう。’ 僕は交通事故に遭ったことはないけど、自分なりに似たような経験はある。僕らが詩を書く時に表現したいのは、そのコアな感情なんだ。何が起きたかっていう話よりも、その気持の方が、僕らには大事」
 
 リンキンには「今まで感じていたけど、どう言葉にしていいかわからなかったことを、歌にしてくれてありがとう」という感想が、ファンからたくさん届くそうだ。私も時々、曲を聴いていて泣きたくなることがある。『Numb』を聴いた時は、「こんな気持で親を見ている人も多いだろうな」と思ったし、『Somewhere I Belong』には引きこもりを思わせるような孤立感を感じた。 
 最新アルバム『Minutes to Midnight』からヒットした『What I've Done』は、「これまでの自分たちの音楽に別れを告げる意味をこめた」曲そうだが、ビデオには戦争や環境汚染などの記録映像が使われ、過去の人間の行ないとその皮肉な結果を見せている。
 
参考サイト
http://www.nyrock.com/interviews/2003/linkin_int.asp
arts.guardian.co.uk/fridayreview/ story/0,,918125,00.html
 

Minutes to Midnight

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