*[JCulture]

sasajun2007-01-07

 知らない人と目が合ったら、米国ではにこっと笑い、日本では目をそらすのが流儀。アメリカ人は自分がにこっと笑ったのに目をそらされると、「どういうこと? 傲慢じゃない?」「何か後ろめたいことでもあるわけ?」と悪い印象を持つ。そんな時、「日本では知らない人をじっと見たりするのは失礼にあたるし、笑いかけたりしないんだよ。その人はびっくりして、’オレ、あのガイジンのこと知ってたかなぁ’って考えてるかもしれないよ」と説明すると、「なぁんだ」となる。
 アメリカはスーパーのレジでも、どっちが店員なんだかわからないくらい、愛想良くおしゃべりするお客さんの多い国柄だ。アメリカ人からすると、日本では話しかけたり笑いかけたりということが少ないので、行く先々で自分が歓迎されてるのか嫌がられてるのかよくわからなくて、戸惑うようだ。「他人と目を合わせなかったら、一体どうやって人と知り合うのか」と聞かれたこともある。
 私は海外からお客さんが来ると、よくカウンターだけのバーに連れていく。8人も座ればいっぱいのバーはアメリカでは珍しいし、料理もして・飲み物も出して・お客さんの相談にものってというマスター/ママにも感心するようだ。何よりも、知らない人と話ができるので喜ばれる。ロックや演歌が流れる店で、お客さんと交流すると、「そうか、こういうバーって、この人たちがくつろぐリビングルームみたいだな」と感じるようだ。
 
 先日も友人が日本に遊びに来たので、ゴールデン街に連れていった。彼が、日本での感想を書いてくれた。
 
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Land of Gentle Beauty 
 
 日本はきわめてエモーショナルな場所だ。道行く人々はさまざまな気持を胸に秘めていて、特に他人に対してそれを見せることは滅多にない。
 それでも彼らの優しさは、芸術様式や、インフラストラクチャーのあり方にすら、にじみ出ている。日本の電車はニューヨークのようにガクガク揺れない。次の駅に到着する時も、何につかまらなくても立っていられるほどだ。
 息をのむほど美しい庭。この国を春に訪れたことがあるが、桜の美しさは言い尽くせない。公衆電話ボックスでさえ小さな仏塔の形をしていたりと、本当にきれいだ。 ここは美しい女性の国でもある。彼女たちはその手をしとやかに動かして気持を表現し、澄んだ声で穏やかに話す。かといって、日本女性は受身で従順なわけではない。現代の東京の女性は、ニューヨーク、ロスアンゼルス、ロンドンにいてもおかしくない。
 彼女たちはシリアスなキャリアウーマンであり、教養があり、ファッショナブルで、世情に通じている。西欧人に時として卑屈さと映るものは、実は洗練された細やかな感性の表われであり、これはアメリカ人は男も女も、学んでいいものだと思う。
 日本の男性もまた、たいへん優しくてよく親切にしてくれる。現代の日本男性は、すばらしい父親になれるだろう。こんなに子どもに対して愛情表現を惜しまない父親を、日本以外の国で見たことはなかったように思う。日本ではあまり人前で愛情を表現しないが、電車の中でお父さんが小さな子どもに顔を寄せてキスするのは問題がないようだ。 前に来た時もこのようなことは感じたが、会議に出たり、講演したり、工場を回って取材したりと仕事をしていたため、表面的にしか見えなかった。
 それに年をとった分、見えるものが増えている。私の眼は、違った種類の情報を拾うようになっている。世界で一番優しいのは、この人たちかもしれない。愛すべき人たちだ。

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