grow out of what and where? 〜バンクーバー、カナダにて

 1週間ほど前にサンフランシスコを離れシアトルでマリナーズのゲームを観て、バンクーバーに移動した。
 バンクーバーは20代の2年間をワーキングホリデーで過ごした場所だ。そこに戻って、自分が一体何を感じるかに興味があった。自分の中で変わったところ、変わっていないところを明らかにしたかった。
 育った町を訪ねてみると何もかもが小さくなったように感じるものだが、まさにここでもそんな印象だ。住んでいたアパートはそのままだった。1230という番地のサインも、細長いゲートも、くすんで見えた。不思議なほど、ノスタルジックな気持がわいてこない。どこかで心理的ブロックが働いているようだ。
 久々に会う知り合いたちは「Vancouver has changed so much」と口をそろえて言うけれど、私にはそんなに違って見えない。アジア人がますます増え、以前のさびれた倉庫街が開発されて活気あるエリアになり、ハイライズのコンドミニアムがにょきにょきと増殖していることは、一見してわかるけど。住んで働いてみたら、また印象が違うんだろう。
 それよりも、同じ街に住み、同じ会社の同じオフィスで同じ仕事をし、同じような人たちとつきあい・・。そういう人がいかに多いかに、驚愕した。といっても日本に帰ればそういう友達はけっこういるので、別に目新しいことではないのだが。アメリカではNYからSFに引っ越すとか、ボストンからフロリダに転職したとか、だんなさんの学校の都合でアリゾナに引っ越したとか、スコットランドに嫁に行くことになったとか、日本に帰るとか日本からやってきたとか、そういう話をしょっちゅう聞き続けてきたので、こんなに変わらない生活を送ってる人がいるのか・・というのが、なんだか新鮮だったのである。
 思えば、なぜバンクーバーから日本に帰国したのか? のんびりして責任のないモラトリアム的なワーホリ生活に、すっかり退屈してしまったのだ。せっかく覚えた英語を使って、日本で仕事をしてみたいという気持もあった。当時つきあっていた人と結婚していたら、この美しい街のライフスタイルが手に入ったのに? と考えても、やっぱりそういう自分は想像できない。
 私はあまりに変化が好きなんだろう。新しい技術、新しいビジネス、新しい価値観、新しいカルチャーを率先して生み出し、試行錯誤して変化させていくダイナミズムを肌で感じられる場所にいると、ワクワクする。サンフランシスコやシリコンバレーみたいな所がやっぱり好きなんだなと実感した。
 昨夜はゴージャスな夜の街並みをドライブしながら、友人と話をした。彼女は同じオフィスで同じ仕事を続け、同じ彼と暮らしている。数日前は、彼の家のfamily gatheringで彼女の采配を目の当たりにして感服した。一見、変化のない生活の中で、いかに彼女が内面的な成長を遂げ、より彼女らしさに磨きがかけてきたかを感じ、尊敬の念を覚えずにはいられなかった。
 アメリカの友人には「You have grown out of Vancouver」と言われたが、何からgrow outするかが、その人の人生の選択というものかもしれない。