日系アメリカ人のアクティビスト、コウチヤマ ユリさんをオークランドに訪ねる。ユリさんは80歳を超えた今も、歩行器や車椅子を使いながら、カレッジなどで講演活動を続けている。
着いていきなり、「あなたの質問に答える前に、まずあなたの事が知りたい」と言われる。お話をうかがうつもりが、逆にインタビューされて会話が始まる。ユリさんは好奇心・向上心にあふれた方で、私と話す間も新しい言葉を専用ノートにメモしていく。結局2時間もおじゃましてしまった。
壁にぎっしりとはられたアクティビスト仲間の写真、チェ・ゲバラの時計、マルコムXのチラシをバックに、「アメリカという国は決して真実を言わない」「アメリカ以外の国が結束して、アメリカのやり方を批判する運動を起こさなければならない」ときっぱり。そういう姿勢を貫きながら、人種や考えの異なる人を分け隔てなく迎え、世の中を変えるためにはまず自分たちが変わるのだという意欲で刺激する。ユリさんに、すっかりインスパイアされてしまった。
現在のアジアンアメリカン・ムーブメントは、アイデンティティの模索の域にとどまりがちで、そこを超えた政治的な運動になかなか発展しない、と知り合いから聞いたことがある。ユリさん自身、30代までは政治に無関心だったという。が、それ以前から一貫しているのは、コウチヤマ家は家族ぐるみで、人々やコミュニティのために献身してきたことだ。政治的な姿勢は、そうした行動の中でつくられていった産物だ。
生きている間に何ができるだろう? 帰り道、そんな思いにとらわれた。