sasajun2007-04-04

 『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』を見てきた。チラシに「オクラ入りから急転!」とあるが、突然日本でも5月公開が決まったそうだ。
 2カ月ほど前にアメリカの雑誌の長い記事を翻訳していたので、ある程度のことは理解していた。が、やはりスクリーンで見るお下劣さは迫力があった。
 カザフスタンから来たレポーターが、アメリカ文化を学ぶために市民をインタビューしながら大陸を横断する、というセミドキュメンタリー・ロードムービーで、TVショーが下地になっている。コメディのツボは、ボラットが語るとんでもないカザフスタンではなく、ホントにカザフから来たレポーターだと信じきってる一般人のリアクションだ。
 個人的な感想を言えば、面白かったが、期待したほどではなかった。有名になりすぎたせいと、映画としてエンタテイメント化されたせいだろうけど、ボラットがあまりにもキャラクターとして完成されていて、偽物と知りながらも思わず本物?とぎょっとするような瞬間がなかったのが残念だった。知らず知らず、ピーター・セラーズのような微妙な演技を期待していたかもしれない。TV版はYou Tubeでちらっと見ただけだが、たぶんそっちの方が面白いだろうと思った。
 実際に映画を見てみたら、批評家がそろってこの映画を高評価していることが、なんとなく不自然に感じられた。ボラットについては、「人種差別、性差別などタブーをネタにした高度なジョーク。これに苦言を呈すれば頭の堅いヤツと言われてしまう」という雰囲気がある。この映画をどう見るかで、自分の知的レベルやユーモアのセンスが測られてしまうところがあるんだろうが、批評家の横並びの反応には、ポリティカリーコレクトであろうとするアメリカ人の生真面目さを感じてしまう。
 で、その生真面目さと、カザフから来た失敬なボラットに対し、礼儀正しく親切に接しようとしてカメラの前で墓穴を掘らされる一般市民の生真面目さは、そんなに違わないように感じられる。さらに私のように、「ボラットを見て笑っていいのか、ちょっとまごつく」タイプの生真面目な人もいる。そういうところをきっちりおさえたサシャ・バロン・コーエンは、やはりスゴイんだろう。