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アジアやアフリカに図書館、学校を建て、子どもたちに奨学金を授与する教育NGO、Room to ReadのCEO、ジョン・ウッド氏をインタビューしてきた。
ジョン・ウッド氏はマイクロソフト社のアジア地域担当のエグゼキティブだった時に、バケーションでネパールに行った。ひょんなことから現地の学校を訪ねたところ、子どもたちの読める本がイジョーに少ないことに驚き、「本を持って帰ってくる」と約束してしまった。ジョンさんは自身が、子どものころから本の虫だったのだ。
最初は図書の寄贈で始まった活動が、どんどん本格的になっていった。しまいには開発途上国の子どもの教育をライフワークにするために、マイクロソフトも辞めてしまった。そうして作ったNGOが、今や驚くべき成果をあげている。2000年の設立からすでに3200の図書館を建て、120万人の子どもの教育状況を改善したというからスゴイ。まるでIT企業の成長グラフを見ているようだ。
そのいきさつを、『Leaving Microsoft to Change the World』という本に著わした。何カ国語にも訳されているが、9月には日本語訳も出版されるそうだ。こういう活動に興味のある人はもちろん、人生を変えたいなぁとか思っている人にオススメ。自然な英語の表現が多いので、英語学習者には英語版がオススメ。
企業の世界にいた人が、もっと意味のある仕事をしたいと社会起業に乗り出す。
ビジネスで学んだ手腕やネットワークを、非営利の活動にいかして成果をあげる。
こういう例は増えている。その中でもRoom to Readの成長はすさまじく、「ひえーっ、辣腕ビジネスマンが社会事業をやると、こうなるのねー」という恐るべき見本といえる。ジョンさんはしばしば「21世紀のカーネギー」などと呼ばれるようだが、21世紀はグローバルに取り組まなければならないことが山積み。政府や企業には実行できない、グローバルな規模での社会事業がもっと盛んになっていくだろう。
国際的なNGO、NPOを取材していると、先進国の人々が途上国の人々の自立を助けることは、人間として当然のつとめ、という思いが強くなる。
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余談だが、私は取材が苦手だ。もともと内省的で口数が多いほうではないので、人前でしゃべるのは得意ではない。特に英語での取材は、自分にある程度、無理を強いて始めたことだ。どうしてこんなことを始めたのかというと、海外の時事にいつも興味があって、それを日本に伝えたいという気持がもちろん一番強いが、それと同時に自分の殻を破りたかったから。自分を変えるには、苦手なこと(初対面の人に会って話をする)にあえてチャレンジするしかないと思った。
それから中学の卒業文集に「海外で取材する編集者になりたい」と書いていた夢を、自分さえその気になればかなえられるポジションにいると気づいて、自分のためにやらなくてはと思った。
「しゃべるのは苦手だけど人の話を聞くのは好きだから、インタビューしても何とかなるはず」と思うようにしている。
数をこなすうちに、取材でひどくあがることもほとんどなくなり、逆に「あなたは私をリラックスさせてしゃべらせるのがうまいね」と言われることも増えてきたが、今日のジョンさんのインタビューでは久々にあがってしまった。非常にナイスな方なのだけど、なんというか、パッショネートなCEO特有のintensityが目にあふれていて、その「目力」にひるんでしまったのだ。
反対に、先週とあるCEOをインタビューに行った時は、会った瞬間から冗談が飛び交い、雑談感覚で話が盛り上がった。
これがケミストリーというものなんだろう。肩書きとか、評判とか、そういうものはケミストリーには関係ない。会ってみるまで、人と人の間に生まれる感覚やダイナミクスというのはわからないものだ。
Leaving Microsoft to Change the World: An Entrepreneur's Odyssey to Educate the World's Children
- 作者: John Wood
- 出版社/メーカー: HarperBusiness
- 発売日: 2007/09/04
- メディア: ペーパーバック
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