サラ・ペイリンという人

 マケインの副大統領候補指名。
 あれだけオバマを「経験がない」と批判しといて、指名したのがこの人ですか。
 こんないきあたりばったりの意思決定をするとは。共和党はよほど人材不足なんだろうなぁ。
 ペイリンさんって、アメリカの政治通でさえ、「はぁ?誰?」って感じの人。
 
*生後3カ月の時にアイダホ州からアラスカのワシラという町に引っ越した。
*このワシラという小さな町で、美人コンテストに出て一位になった。
*さらにこの町(人口7738人)の市長を、1996年から2002年までつとめた。
*それから連邦政府からの援助をいっぱい受けている(つまり経済活動がスロー)アラスカの知事になった(知事になって2年弱)。
*解雇権の濫用の容疑で、自身が州議会より取り調べを受けている最中。
*44歳、5児(!)の母
*中絶反対のばりばりのクリスチャン (レイプや近親相姦で妊娠した場合も中絶はNO)
全米ライフル協会のlife membershipをもっている。
*石油業界とつきあいが深い
*外交経験まるでゼロ
*ていうか、アメリカ合衆国から外に出たことがない(!!アラスカの外に出たことが何度あるのかも気になる)。
*マケインとは一度しか会ったことがない
BBCの記事
 
しかも今日、ここにきて、17歳の娘が妊娠5ヶ月であることを発表。子どもを産んで、赤ちゃんの父親と結婚する予定だという。
長男は昨年の9月11日に陸軍に入隊し、今月11日にイラクに派兵される予定である。
 
夫のトッドさんは
イヌイットの血をひく漁師(ペイリンが知事になる前は20年間BPの油田で働いていた)
スノーモービルのレースが趣味で、『Tesoro Iron Dog』という大会で4回優勝している。
*若いころ飲酒運転で逮捕されたことがある。
*自分のことを「First Dude」と(first lady/gentlemanのかわりに)呼んでいる。
NY Postの記事
 
政治家の夫が、40歳過ぎて自分のことを「dude」ですか。。。
この家族、まだまだぼろぼろネタが出てきそうな感じがする。 
ハリウッドの政治風刺映画をまさに地でいってるよ。。。
(このタイミングでハリケーンまで来ちゃったし。)
 
 ダウン症とわかっていたにも関わらず、子どもを産んだことを美談とするむきもある。でも4月に産まれたばかりのダウン症の赤ちゃんと、12月には初出産するティーネージャーの娘を家に残して、過酷なキャンペーンに出るのは、人間として親として正しいことなのか。(私でさえそう思うのに、超保守派のクリスチャンの”良妻賢母”たちは、もっと疑問を感じるのでは?)
 
*** 
 
 マケインという人は、自分が当選すること以外頭にないんだなぁ。そう感じた。
 ヒラリー支持者をかっさらうために、選挙に利用できそうな女性を探したのか。でもヒラリー支持者たちは、彼女が女だからという理由だけで支持していたわけでは決してない。
 高齢で病気持ちなのだから、自分に万が一のことがあった時に、国を任せられる人を指名するのが筋ではないか。(マケイン本人も、4月のインタビューではそれが一番のVP選択基準だと答えていた。)
 国のこと、国民のことを真剣に考えてたら、これはあり得ないだろう。
 私はペイリンという人にも好感は持っていないが、こうして引っ張りだされ、騒がれたあげく、結局はVP指名を辞退し、キャリアも家庭もうまくいかなくなっておしまい、ということになっても不思議はないと想像したりする。
 
*インターネットも使えない。
*自分の持ち家の数すら答えられない。
*何かというと戦争の体験を話して情に訴えようとする。
*奥さんはすんごいお金持ちの家の出身で、親の財産を独り占めして、メディアには兄弟がいないと嘘をついていた。
*先祖は南部の豪族で、奴隷を何人も使っていた。それをメディアに突っ込まれたら「知らなかった」ととぼけた。
Salon.comの記事
 
 こんなマケインをうさんくさく感じていたが、びっくりVP指名で、嫌悪感に変わってしまった。共和党員はこの決定を一体どうみているのだろう。

SNS嫌い

 サンフランシスコに住むようになって一年。ひと月前にユリイカ・バレー(カストロエリア)に引っ越して、ますます知り合いが増えた。
 facebookmixiでつながった人も増えた。が、SNS嫌いな人が今もけっこういるのには驚く。
 
 こないだ映画祭などドイツ政府の文化事業を担当する女性の家に遊びに行った。ハンガリー系のドキュメンタリー作家、それからロシア系の作家、私の4人で、深夜まで楽しくおしゃべりをした。
 帰る時になって、タチアナ(ロシア系の作家)が「facebookしてる?」というので、つながることにした。
 
 あとの二人は「facebookは絶対やらない」。どうして?と聞くと、「自分のことをアピールして、友達をaddして、何人いるか競争みたいになるんでしょう。くだらない」
 友達の数で競争か〜。そういう理由でSNSを利用してる人は少ないと思うけどな。ものの見方にはその人の性格がよく出るものだ。
 もうひとりは「自分はメールアドレスも電話番号ももってるし、連絡したければそれで事足りる。SNSの世話になる必要ない」。世話になる必要ないって言い方が、頑固だな。
 「でもメールアドレスって変わるじゃない。連絡がとれなくなる人もいるでしょ。SNSって、多機能のアドレス帳みたいに使えるよ」と私。
 「むかーしの知り合いが、私をfacebookで見つけてコンタクトしてくれたりすると、すごくうれしい。そうやってつながりが復活することもけっこうあるんだよ」とタチアナ。(逆に「やっと縁が切れたと思った人から連絡がきた」とfacebookを恨む声も聞いたことあるけど。)
 
 「僕はそういうものは信用しない」
 ・・出た。
 インターネットが世の中に出て、これだけ利用されるようになっても、「基本的にはネットは信用しない」という人がこのベイエリアでもいるんだなぁ。。
 年齢からいえば、SNS嫌いは40代以上。昔ながらの手紙に近い感覚で使えるEメールまでが許容範囲なんだろう。あとは理由として、時間がない、個人情報は外に出さない主義、自分ほどの社会的立場の者が若い人に混じってプロフィールをさらすのが嫌だ、など。
 ま、別に嫌ならやることない。けど、アメリカで上映の機会の少ないヨーロッパの映画や映画祭の宣伝告知したり、そういうことにも便利なのにな。インディーズ系メディア関係者だけに、ちょっと残念である。
 
 そういえば、ジョン・マケインはネットを自分で使ったことがないそうだ。「インターネットのことは知っている」「ワイフに頼っている」と発言したとか。
 オバマはマックユーザである。:)
 http://obama-mccain.info/compare-obama-mccain-computer.php
 
 

『解かれた封印』7日に放送

 昨年7月にサンフランシスコに越してきてから、初めて米国リサーチ/コーディネートを担当させていただいた『NHKスペシャル』が、明日放送になります。
 
『解かれた封印 米軍カメラマンが見たNAGASAKI』
 2008年8月7日(木)
 午後8時〜8時49分
 NHK総合テレビ
 http://www.nhk.or.jp/special/onair/080807.html
*米国では、8月8日(金)夜に「TV JAPAN」チャンネルで放送されます。(西海岸午後7時、東海岸午後10時)
 
「今、1枚の写真が注目を集めている。
 63年前、被爆した長崎で撮影されたもので、亡くなった幼い弟の亡きがらを背負い火葬場の前にたつ「焼き場に立つ少年」と題された写真だ。
 撮影したのはアメリカ人カメラマン、ジョー・オダネル。去年8月9日、亡くなった。占領軍として原爆投下後の長崎に入り、その破壊力を記録するため写真を撮影する一方で、軍に隠れ内密に自分のカメラでおよそ30枚の写真を記録した。帰国後、被爆者の記憶に悩まされ、悲劇を忘れ去ろうと全てのネガを自宅屋根裏部屋のトランクの中に閉じこめ、43年間封印してしまう。しかし晩年になって原爆の悲劇を訴え母国アメリカの告発に踏み切っていく。原爆投下を信じる周囲から非難の声を浴びながら、85歳の生涯を閉じた。
 なぜオダネルは、軍の規則に違反して写真を撮影したのか。
 なぜその写真を長年隠し、晩年になってトランクを開け母国を告発したのか。
 その足跡を追う息子が、遺品の中に残された録音テープを発見した。そこには写真に秘められた過去と、真実を伝えざるを得なかったオダネルの思いが告白されていた。」
 
 取材しながら、戦後63年を経て、アメリカ人の方々が原爆を語る言葉に、涙が出そうになったことが幾度かありました。できるだけ多くの方々に見ていただけると幸いです。

 最近ちょくちょくチェックしているのがPredictifyというサイト。

sasajun2008-06-19

 
 「Don't just read the news - Predict it!」というキャッチフレーズどおり、政治、経済、社会問題、気象、カルチャー、スポーツなどからさまざまな話題をとりあげ、ユーザが予想している。
 
 同性愛結婚が合法化された今週、サンフランシスコで結婚するカップルは何組か?
 今年のMLBオールスターゲームで勝つのはどちらのリーグか?
 映画版『Sex & the City』は公開の週、興行一位になるか?
 ブッシュ大統領は任期中にオサマ・ビン・ラデンを捕まえることができるか?
 オバマは誰を副大統領候補に指名するか?
 etc.
 
 ユーザは質問を出したり、答えたりすることができる。予想回数と正答率が高まると、ユーザの中でランクが上がっていく。特定の分野で正確な予想を続けて行くと、サイト内で専門家的な立場を確立できる。どういう仕組みだったか忘れたけれど、ちょっとだけお金も入ってくる。
 
 予想サイトはこれまでにもいろいろあったようだ。ほかを使ったことがないので比較できないけれど、Predictifyはなかなか使いやすいように思う。このサービスは、さまざまなビジネスや社内ユースなどにも応用が可能だろう。
 
******
 
 さてさて、こっからはシリコンバレースタイルの転職の話。
 Predictifyのエディターは私のメンター、Davidさんだ。昨年他のベンチャー企業からレイオフされて、どうするのかしらと思ったら、数日後にはLinkedinやFacebookのプロフィールを「Media Consultant」に変更し、さっさと名刺を作った。レイオフされたことを伝えると、友人知人から仕事の話が舞い込みはじめた。一時期は大学教授に戻るのがベストかと考えていたが、ある日何の気なしにCraigslistをブラウズしたところ、Predictifyの求人広告が載っていた。面白いサイトだと思って履歴書を送り、1週間後には採用が決まり、2週間後にはオフィスに通いはじめた。
 
 Davidさんはベテランジャーナリストで、Hot WiredやSalon.com、KQEDのシニアマネジメントを務めてきた人だ。本来ならセミリタイヤして本の執筆でもするかという年齢だが、小学生の子どもがいるので、まだまだリタイヤするわけにはいかない。華々しい職歴は、再就職にはプラスにもマイナスにもなりうるし、新聞雑誌の衰退で優秀なジャーナリストたちがどんどん解雇されている中、一体どんな仕事に就くのかなと思っていた。
 Predictifyは、典型的なベンチャーだ。CEOをはじめ30才前後のギークからなる10人ほどのメンバーが、テレビゲームルームとエスプレッソマシンのあるオフィスで働いている。Davidさんはひとりシニアなわけだが、彼らと働くのをとても楽しんでいる。「政治的なしがらみがない。世の中がよくなるような話題に興奮するポジティブさがある。損得を考えずよく働く。何かしら新しい価値を想像できるんじゃないかという希望に満ちている。会話がインテレクチュアルで面白い。つまり・・・、退屈じゃない!」
 彼らもベテランジャーナリストが加わったことに、とてもわくわくしているようだ。
 
 若いギークたちと彼らの父親世代のジャーナリストが、縦のしがらみなく、机を並べて、自由に対話しながらひとつのサービスを作っていく。日本のデザイン会社などでもたまに見られる光景だが、実力主義と分業が徹底している。
 日本にいると、何かというと「もう年だから・・」という言葉をよく聞くし、あげくの果てに「これからどんどん体力がなくなるわよ」「45を境にどっと老けるわよ」とか、ご丁寧にリマインドしてくれる人がたくさんいる。
 シワが増える分上手にできるようになることも人間たくさんあるわけだし、体力の衰えを知力や経験値でカバーできる仕事もあるんだから、そんなに年、年といわなくてもいいのになぁ、といつも思う。
 
 Predictifyが成功するかどうかは、あと一年くらいで結果が出るだろう。成功すれば、Davidさんにまとまったお金が入るかもしれないし、そしたらセミリタイヤにちょっと近づくかもしれない。
 成功しなかったら、その時はこの仕事で築いたネットワークを活かして、また職探しだ。
 
 

 サンフランシスコは物価が高い。アメリカというと、みんなが広いアパートや家に住んでいると思っている日本人もいるようだが、サンフランシスコ市内に限ってはそうではない。1bedroomを借りようとすると、1500ドルくらい。2bedroomであれば、1800〜2300ドルくらいが相場だと思う。studio(ワンルーム)でも1000ドル以下のところはなかなかない。円高になり、1ドル105円で計算したとしても、10万円以下の家賃では、ひとり暮らしはできないということだ。

sasajun2008-04-18

 
 もちろん物価だけでなく、平均年収も高い。minimum wageは時給9ドルだ。私は日本のクライアントさんから日本円で支払っていただいているお仕事が多い。昨年引っ越してきた時は為替が1ドル125円くらいだったので、ジュースひとつ買っても「高いなぁ」とめげたものだ。
 
 で、サンフランシスコと周辺のベイエリアで高騰が著しいのがガソリンだ。アメリカのガソリン価格を、gasbuddyでチェックしてみると、カリフォルニアの価格がどれだけ高いかわかる。今朝の新聞に、「1ガロン4ドルの都市になろうとしている」という記事が出ていた。
 
 こないだBARTに乗ったらけっこうこんでいて、「何かイベントでもあったのかな?」と思った。そうではなくて、電車/バス通勤に切り替える人が増えているとのこと。今年1月に比べると、平日は平均23,000枚もチケットの売り上げが増えたそうだ。ガソリンに加え、ゴールデンゲートブリッジ、ベイブリッジなど、マリンやバークレーなどの隣町との行き来に使う橋の通行料も上がり続けている。家族2人が別々に車通勤をしたら、月のガソリン代は500ドルにもなりうる。会社から通勤交通費は出ないので、そのまま家計にひびく。
 
 ガソリン代の高騰で、市民のライフスタイルにこのような変化が出ている。
*公共交通機関の利用が増えた。
*家族や同僚とカープールするようになった。
*燃費のいい車種や、ハイブリッドカーに買い替えた/買い替えようと思っている(プリウスのタクシーも見られる)。
*自宅勤務を増やした。
*用事をまとめて済ますようになった。
*ガソリン代はカットできないので、食事やレジャーなど、他のことで節約している。
 
 ため息をつきながらも、「多少の不便はあるが、車の運転を減らすことが環境にはプラスになっていると思うと、悪い気はしない」という市民が意外と多い。
 市長には、ここで一気に予算を投じて、公共交通機関の拡充をはかってほしいものである。市民に不便を強いるより、BARTやMUNIを、もっと便利に使えるよう改善する余地は十二分にある。なんつっても、あのBARTの券売機はdumbでいただけない。チケットの買い方がわからなくてまごまごしている人が多く、私もいつも助けてあげている。MUNIのドライバーの中に、お客さんに意地悪な態度の人がいるのもむかつくし、スケジュールにルーズすぎる。
 サンフランシスコに住んでいてすごく恋しいのは、安全で効率のいい東京の電車だ。YouTubeで長年お世話になった中央線の映像を偶然見た時は、思わずじーんときた。サンフランシスコの公共交通機関の整備が進まない理由のひとつが、「地震があるから」ということらしいが、Muniの職員を数十人、営団地下鉄に研修に送り込んでほしい。日本は交通機関構築のコンサルティングによって、世界に貢献できるはずだと真剣に思う。
 
 私はいま車の運転を練習中で、Zipcarというカーシェアリングサービスをよく利用している。これがなかなかのサービスで、この会社の株が売られていたら買いたいと思ったくらい気にいってしまった。(残念ながらプライベートカンパニーだった。)近所の駐車場から1、2時間単位で、好きな車が借りられる。プリウスミニクーパー、ジェッタなど、人気車種がそろっているので、毎回、どれに乗ってみようかなーと楽しい。予約はネットでするのだが、インターフェイスが優れていて快適だ。
  
 SFのガソリン高騰について、他の都市の保守派には「公共サービスの充実を求めるリベラルが多いから、税金と物価が上がるんだよ。ざまみろ」という人もいる。だが、NYを除いては超車社会の米国に「車持たない方が、もしかもしてかっこよくない?」というのが主義/ライフスタイルとして取り入れられるとしたら、それはやはりサンフランシスコから始まるような気がする。

 

 

sasajun2008-04-11

 きのうのオリンピック聖火リレー in サンフランシスコは、前代未聞の顛末だった。

 おとといの夕方、土壇場になってギャビン(・ニューサム市長)が「明日のルートは変更する。でも公表しない」と発表。リチャード・ギアデズモンド・ツツ大主教を迎えてのプロテストイベントでは、「明日のプロテストは非暴力で」が繰り返されていた。Free Tibet!と盛り上がったプロテスターたちは、翌朝「世界にサンフランシスコのスピリットを見せよう!」といきまいて、8:00amから開会式会場付近に集結したそうだ。
 
 私はプロテストサイトのケータイ情報サービスに登録したんだけど、新しい動きがあるたびにメールで教えてくれるのでとても便利。ここ数年、アクティビストたちはネットとケータイを使うのがすごくうまくなってるな〜。
 
 一番人出が多かったのは、閉会式が行われる予定のジャスティンハーマン・プラザ付近。行ってみたら、なんかあたりが真っ赤じゃないですか。フリーチベット派ばかりを想像していたら、プロチャイナ派が半分くらい。その多くが英語もわからなそうなお年寄りで、風情はゲートボール集団。プロテストが起きていることもよく理解していない様子である。
 後で知ったんだけど、中国領事館と中国系アメリカ人のグループが、プロテストに対抗すべく、ベイエリア全体はもちろん、はるばるロスアンゼルスからも、チャーターバスでかり出してきたんだそうな。ご苦労さまなことです。
 
 警察と市のバスに包囲されながら、聖火リレー開始を待つこと数時間。予定の1時をずいぶん過ぎて、やっとケータイに「トーチ出発!」とメールが。ってことは、1時間半後には閉会式のエリアにやってくるはず。ところがここからがとんでもない。「Van Ness St.とPine St.を北上中」とか10分おきくらいにメールが入るんだけど、まさか!の地味な住宅街などをじわじわと進行していく。一体どこにいくつもりなの??
(San Jose Mercury Newsのマップ)
 
 「トーチはこっちにこないよ」とみんなが話し始めたので、途中から家に帰ってテレビの生中継を見た。モーターケードに包囲されて、二人一組の聖火ランナー(走れないのでウォーカーか)がのろのろ進み、数ブロックごとに交替する様は、喜劇的としか言いようがない。それでも笑顔をたやさないランナーが健気。肝心の聖火は倉庫やバスの中に避難してはまた現れたり、何だかなぁ。。。だらだらリレーのゴールは、一団が歩行者が入れないフリーウェイに避難して(?)ほっと一息。そのまま聖火はバスに乗せられて空港に向かい、このhot potato(扱いにくい問題)は、ブエノスアイレスに無事パスされたのだった。。。
 
 結局、閉会式はキャンセルされ、先のプラザに集まっていた人たちは空振り。あのチャイニーズの老人たち、あんなに待ったのに気の毒だなー。
 プロテスト側にしてみれば、コースも変えさせたし、閉会式もキャンセルさせたしで、世界への意思表示は大成功といっていいだろう。しかも、テレビに映ったかはわからないけど、聖火ランナーのひとりが、チベットの旗をやおら取り出して広げたとか(やるなー)。他にも「チベットのことを思いながら走る」と発言したランナーがいたけども。
 
 突然現れた警官とバスと聖火ランナーと、それを追っかける群衆にびっくりした人もいれば、現れるはずの聖火を待ちわびた人もいる。イレギュラーなコースに伴ってあちこちが通行止めになり、市営バスのルートもスケジュールもぐしゃぐしゃ。市全体がサプライズリレーに翻弄された、SFの歴史に残る一日だった。
 
 だって、お台場〜丸の内って感じのコースが、中野〜世田谷に変更されたようなもんですからね。「混乱を避けるための奇策」とか書かれてたけど、市民やドライバーは十分混乱させられてましたって。(笑)
 
***
 
 当然ながら、「だまされた」「裏切られた」と怒ってた市民もいた。
 
 が、今朝のSF Chronicleに、こんな政治アナリストの記事が。
「閉会式会場付近に集まった人々の半分以上がプロチャイナのサポーターだったし、ゆゆしい危険はなかった。プロテスターはチャイナのサポーターに囲まれたり、旗を破られたり、妨害されていた。あのままテレビに放映されたら、中国のチベットでの虐殺に対し、サンフランシスコでは何の抗議行動も起きていないようにみえたかもしれない。それではこの中継をオリンピックPRに使いたい中国政府の思う壷だ。市長のルート変更は、それを避けるための策でもあったのではなかったか」。
 
 うーん、あり得るなぁ。この説が主流になれば、市長はリベラル派から支持を得るだろうなぁ。
 21世紀、自分たちがどれだけ複雑な世界に生きているか、それがいかにコミカルな状況を作り出すかを、つくづくと感じた一日だった。
 

ベジタリアン・キッズ

 人に意見するのは基本的に避けたいと思ってるんだけど、おととい、男友達に説教くれてしまった。
 
 夕食時に、子供(12歳、9歳)が、「ベジタリアンになる」と宣言したそうな。で、彼は「地球のために菜食したいという子供を誇りに思う」とか言っている。
 
 肉とポテトがメインのアメリカで、菜食はたいへんよろしいことだと思う。でもそれは「肉類以外の食品から必要な栄養素をとれる食事を、きちんと実践した」上でのこと。
 
 観察するにこの家族は、菜食=肉食べない、だと思っている。 だいたいにして、この子たち、魚を見れば鼻をつまみ、お肉のつけあわせの豆や、キュウリ、トマト、リンゴ、バナナすら嫌がって食べないのに、どうやってベジタリアンになるんじゃい! 
 
「どうしてベジタリアンになろうと思ったか聞いた?」とたずねたら、「アニマル・プラネットTVで、畜産による環境破壊の番組でも見たんだろう」。おいおい。
 
 タンパク質は、内臓の生育にも影響する。摂取量が足らなかったら、体の弱い大人になっちゃう恐れがあるんだよ。肉からとれないビタミンや他の栄養はどうするつもりなの? 今の野菜嫌いの状態からいったら、ベジタリアンじゃなくてジャンカタリアン(お菓子やスナックなど、ジャンクフードしか食べない)に育っちゃうよ。あなたは子供が偏食にならないよう、栄養を勉強して献立を考えて、ヘルシーな食事をつくる覚悟があるの? それともサプリメントを使えばいいって思ってるの?
 
 ・・・と話すと、友達は考えこんでしまった。 よく「You can't force your child.」と言って、子供がやりたがらないことは押し付けず、食べたがらないものは無理に食べさせない人である。子供の意思を尊重するのはすごいなと思っていた。でも、成長期の食事はやっぱり親の責任だし、その子の将来を左右するものだ。
 
 大人のベジタリアンの友達は何人もいる。菜食の制限が高くなるほど旅先などでは苦労もあるし、完全菜食の人は3食ほとんど自炊だ。でも自分の体調に気を配り、自分の体に責任を持っているのだから、何の問題もない。
 
 だが「肉はパスしてフライドポテトしか食べない私はベジタリアン」と思いこんでいるような子供は、いかがなものか。
 
 好き嫌いなく、バランスよく食べるよう育ててもらったことを、親にとても感謝している私としては、そしてアメリカの食生活にひと文句ある私としては、言わずにはいられなかった。
 
 このことをきっかけに、その子たちがもっと野菜や果物を食べるようになるといいな。